『自然に産みたい』27年目の電子版の刊行にあたって  橋本ちあき

『自然に産みたい』に登場した五人の子どもたちは皆成長し、それぞれ家族を持ちました。
その間に、私にもいろいろなことが起こりました。とりわけ2011年3月11日の東日本大震災による原発事故では、長年暮らした福島の我が家を離れることとなり、現在は関西の田舎で暮らしています。
世界も変わりました。地球環境問題、温暖化現象も深刻になってきていますし、今はウイルスの脅威に世界中が揺れています。
そんな変化の中で、私は昔と変わらない暮らしをしています。畑を耕し小鳥の声を聞き、自然料理を食べ薪暖房で暖まるという日々です。そして孫たちとの暮らしから、「生活とは、少しずつ姿を変えながらも継承され再生産されていく文化だ」と気づかされ、日々の生活の中にある豊かさを次の世代につないでいきたいというささやかな夢を抱くようになりました。自然を感じる心や、いのちを大切にする暮らしと食の知恵は、どんな時代になっても、おそらく個人にも社会にも、ほどほどの幸せをもたらすだろうと思えるからです。それも自然に無理なく…。
『自然に産みたい』を書いてから二七年たちました。この間に、読者の方々からの感想をたくさんいただきましたが、今もときどき、見知らぬ方からSNSを通してメッセージが届きます。どこで手にとってくださっているのだろうと不思議に思っていますが、拙著がずっとどこかでどなたかの役に立っているということは、望外の喜びです。
そして、このたび電子書籍にしていただけるということで、また新たな出会いを楽しみにしています。

2021年 春

 

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