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宇宙の森へようこそ

タイトル 宇宙の森へようこそ
著者名 長谷川時夫
発行年 1988年
ページ数 A5判上製 144ページ
価格 1800円+税
ISBN ISBN4-88503-064-2 C0095 \1800E

いま聞こえる音は? ――雲が月に当たった音。
山の中にいても都会のまん中にいても、そこはいつでも宇宙の森の一角。
すべての人の暮らしの中に、心の中に、いま宇宙空間を呼び戻す。

日本で最も雪深い山あいの里、新潟県大池に移り住んだ著者は、廃校となった小学校の校舎を拠点に、フリースクールやインドの民俗画、ミティラー画の美術館などを通じて、独特の宇宙観に基づいた文化活動を展開する。森の生活からあふれ出る宇宙大のイマジネーション、子供たちを宇宙に誘い出す「仙人テスト」や「仙人すごろく」「すすきの穂合わせ」などのユニークな遊びを絵と文章で自在に綴り、そして一人でも多くの人と宇宙空間を分かち合うために歩んできた道のりを語る。

本文63~64頁より
深い底なしの闇が磨く月は、眩しくて見られないほどの輝きを持つ。そんな時、森は踊るようだ。青白さが雪山を包んで、静けさの中に月の動く音が聞こえそう……。
そのような晩に、子どもたちがかんじきをつけて、雪を掘りながら屋根に登る。子どもの背丈よりも高い雪を月明かりに進む。かんじきで踏み固めた上にむしろを敷き、屋根の月見の宴だ。下で見る月と屋根の上で見る月はまた違う。
「いま聞こえる音は?」
すべての音が雪に沈んでいる。子どもが答える。
「うさぎがとぶ音」
「雲が月にあたる音」
何か足りないものがある。子どもが下へおりてルバーブを持ってくる。アフガニスタンの砂漠に生まれた古代の楽器だ。月光のじゅうたんに乗って、僕たちは旅をしている。
「ルバーブの音はどこへ行くか?」
「月を見ている生きものたちの耳に」 音が森をすべる、すべる。
月は不思議な書物で、読んでいるといろいろなことがわかる。部屋の中に置いてひとりで見るものではない。勝手に宇宙の家にやってくる月は、地上、中空、天空とすべてのものを見、またすべてのものに見られている。月を見ることは、だから宇宙の部屋にいる自分を知ることだ。
月は宇宙のろうそく。
心のたき火。
詩人たちの夢枕。
月を友とすることは、宇宙に生きること。

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