母と子のためのお話とお話論
治療教育家であり、語り部である著者が子どもたちとともに創った12のお話のほか、子どもにお話を語るにあたって気をつけることやお話の持つ魅力や魔法などを、豊かな感性とユーモア、子どもたちへの深い慈しみとともに綴る。
子育てとは、すでに子どもの心にある物語を母が聴き取ること、と語る著者の物語論は、子どもにとってのお話の大切さを再認識させてくれる。子を持つお母さん、自閉症やADHDの子どもたちが身近にいる方、読み聞かせに関心のある方、子どもの心を豊かに育てたいと願うすべての大人へ。
【目次】
プロローグ
子どもらよ、お話くれてありがとう
第一章 母子のための十二のお話
1.お話のお話 お話の島を探して
喪失と再発見
2.ぴぴじゃーぬすぶる/ヤギの頭
動物物語、原像の融合
3.鮫に呑まれたお医者さま その名もドクトル・ビーカルト
大いなる母胎への回帰
4.鬼たちの粥
大自然と人の知恵
5.菫と少女
儚さ、切なさ、そして貴さ
6.龍神さまの置き土産
逆転の発想
7.イルカとライオン
対照動物
8.孤独の狼
出遭い
9.村の友だち
勇気
10.うたびとと女王
いちばん大切なものは見ることができない
11.玉葱の精霊イルミナウ
恋愛とは、失恋とは
12.母の病
母なるもの
第二章 物語が生まれるとき
1.子どもは天から物語とともに降りてくる
2.無から有が生じるとき
3.美しさからおぞましさまで―母たちの国、原像の国
第三章 物語のしつらえ
1.光と影に気を配る
2.子どもたちの様子を見る
3.信頼すれば信頼される
4.下手でもよい、敬いと慈しみをもって語ろう!
第四章 リズムと響き
1.言葉に宿る精霊―自閉症に学ぶ
2.わらべうたからうたばなしへ
第五章 楽しいうたばなし
1.鬼たちの粥うたばなし
2.きつねさん、かみさま
3.歳神さまのうたばなし
4.ごきぶり五郎兵衛うたばなし
第六章 子どもたちにお話を語るにあたっての留意点
1.年齢に応じてふさわしい物語はあるのか
2.伝承昔話を取り上げるには
3.残酷さや悪をどう処理するか、そもそも処理すべきなのか
4.時代にふさわしい物語はあるのか、時代性と普遍性
5.ADHDの子どもらにはどう対処すればいいか
6.キャラクターの問題
7.ファンタジー小説について
8.語るとき抑揚をつけるのか
9.物語はいつ語り聴かせるのか
エピローグ
あとがき
【著者プロフィール】
川手鷹彦(かわてたかひこ)
1957年、東京生まれ。藝術治療教育家。演出家。89年、スイスのゲーテアヌム言語造形・舞台藝術学院卒業。俳優・演出家として活動しながらドイツの治療施設で自閉症、ダウン症、非行の子どもらの藝術教育に携わる。93年から日本で治療教育の実践を始める。現在、東京で藝術・言語テラピー研究所「青い丘」、沖縄で「青い丘」治療教育研究所うーじぬふぁーを主宰。著書に『隠された子どもの叡知』『子どものこころが潤う生活』など。訳書にドナ・ウィリアムズ著『自閉症という体験』(いずれも誠信書房)
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